Type-Cが速い、というわけではない
徐々に一般的なパソコンにも搭載され始めた、USB Type-C端子。 Androidユーザーであれば、これでパソコンもスマホもひとつの充電器でよくなったね。 という話なんだけど、実際はそう簡単でもない。
従来のUSB端子やMicroUSB端子に比べて、充電もデータ転送も速くなったんだよね。 という印象が強いと思うんだけど、そうではない。 いや、そうなんだけど、場合によってはそうではない。
そもそも『Type-C』というのは、USBの通信規格の名前ではなく、あの形状をしたコネクタの名前なんだよね。 これがすごく紛らわしくて、従来のUSB端子で専ら採用されていたのがUSB2.0っていう規格なんだけど、 Type-Cではこれが基本的にUSB3系統にグレードアップされてる。 この、"基本的には"っていうのが問題なんだよね。
まず、USB2.0とUSB3系統でなにが違うかというと、データ転送速度と給電能力が全く違う。 データ転送速度でいうと、USB2.0が480Mbpsで、USB3系統が5Gbps以上。 もちろん、これは理論値だから、どちらも実際にはこんなに速度は出ないけど、規格としてのポテンシャルがそもそもこんなに違う。 給電能力も、USB2.0が500mA程度なのに対して、USB3系統は900mA程度、さらに電源供給用の規格であるPD(パワーデリバリー)に対応していればその20倍程度。
すでにここまでで頭がこんがらがってくるけど、折角Type-C対応機器と使うのであれば、注意点をうまく把握して最大限その恩恵を受けよう。
Type-Cコネクタであっても、USB2.0規格のものは遅い
先ほども書いた通り、Type-Cは"基本的には"USB3系統なものが多いという話であって、なかには形状がType-CなだけでUSB2.0規格のものも存在する。 この場合、データ転送も給電能力も従来のMicroUSBケーブルと変わらない。
家電量販店にしろネット通販にしろ、値段が異様に安いケーブルなんかはこの可能性が特に高い。 能力が劣るってだけで、別に使えないわけではない。 けど、敢えてコストダウンのために製品能力を下げて、よく分かってない消費者を騙そうとしてる風にも取れないことはない。 まぁ、そもそも転送速度も給電スピードもいらないよって人にとっては、コスパはいいのかもしれないけど。
このトラップ(?)にはまらないためには、製品パッケージや説明に書いてある仕様をよくチェックしよう。 データ転送速度が最大480MbpsってなってたらUSB2.0だし、5Gbps以上ならUSB3系統ということ。 製品によっては、実際に有効と思われる転送能力を指して4Gbpsなんて表示になってたりするかもしれないけど、これもしっかりUSB3規格だからご安心を。
さらに、ケーブルは買い替えれば済むけど、スマホやパソコンそのもののType-C端子がどの規格のものかってことにも当然左右されます。 もしもスマホからパソコン側にデータ転送をする際に、パソコンのUSB端子がUSB2.0だったりしたら、どんだけいいケーブルを買っても480Mbps以上は絶対に出ません/笑。
複雑なUSB3系統の種類
先ほどからUSB3系統って呼び方をしているのだけど、USB3の中でも色々規格が分かれて、さらにその呼称が統一されてなくて余計に混乱を招いている。
現状、USB3系統の規格が3種類あるんだけど、ローンチされた頃の呼称と現状の呼称が変わってしまっている。
当初の呼称 | 途中の呼称 | 現在の呼称 | データ転送速度 |
---|---|---|---|
USB3.0 | USB3.1 Gen1 | USB3.2 Gen1 | 5Gbps |
USB3.1 | USB3.1 Gen2 | USB3.2 Gen2 | 10Gbps |
--- | USB3.2 | USB3.2 Gen2x2 | 20Gbps |
はい、もうわけがわかんないよね/笑。 製品の発売時期が古ければ古い名称のままだったりするので、もうこれは名称で判断するよりも、やはりパッケージ等の仕様を見て、転送速度をチェックするのが一番。
あと、これも先に書いた通り、接続する双方のデバイスの端子の規格に依存します。 USB3.2 Gen2x2対応のスマホを買ったから、ケーブルもUSB3.2 Gen2x2にすればパソコンへのデータ転送が20Gbpsだぜ! と思っても、パソコン側がUSB2.0であれば、絶対に絶対に480Mbpsしか出ません/笑。
PD対応のものでなければ高速充電はできない
ここまではUSBの根幹の規格の違いだったんだけど、給電能力においては、さらにここにUSB PDなる規格が乗っかってくる。
どういうものかというと、従来のUSBに給電専用の拡張機能を持たせたもの。 仕様としては、5V・9V・12V・15V・20Vの5段階の電圧に最大5Aの電力を供給して、最大で100Wまでの電力供給を可能にするよというもの。
ここでも注意なのが、使用上は最大100Wってだけで、すべてのPD対応製品が100Wの給電能力を持っているわけではないということ。 実際に今手元にあるケーブルの仕様を見てみたところ、「定格15V/3Aの高出力充電対応」となっており、つまりは15V x 3A の45Wです。 このように、規格上は最大100Wだけど、製品によって対応してる最大電力は違うよということ。
あと、これもまた、接続する双方のデバイスがPD規格に対応していなければ使えません。 PD対応!と謳っているスマホを買ったとしても、実際にPD充電を享受するにはPD対応ケーブルとPD対応充電器(もしくはパソコン等)が必要になります。 そして、給電側デバイスとケーブルと充電側デバイスが共通して対応している電力でしか充電はされません。
結論:仕様はよく確認しよう
まとめると、要はパッケージ等に書かれている仕様をきちんとチェックして、本当に自分の望んでいる規格の製品なのか確認するのが大事ということ。 上述のとおり、現段階では規格名だけでも判断つかない部分も多いので、しっかりと転送速度と電源供給能力を数字で確認すること。 これはケーブルに限らず、モバイルバッテリーやAC充電器を買う時にも共通して言えること。
そのうえで、現行の最強スペックのUSBコードはとなると、転送速度が20Gbpsで最高出力が20Vの5AでのPDに対応したものとなる。 どうしてもこんなケーブルが必要ってひとはいないと思うけど/笑。
まぁ、従来のMicroUSB時代の転送速度で別にストレスなかったよって人にとってはどうでもいいことではあるけど、 仮に同価格帯で気になる商品があった時によりスペックのいいものを選びたいという際の判断材料にはなるかな。